最近、PowerPointをプレゼンを作るだけではなく動画を作るためのツールとして使う例が見られます。確かにPowerPointにはさまざまなアニメーションが用意されており、いろんなアニメーションを作ることができます。

しかし、アニメーションするだけが動画でしょうか？

動画を作りたいと思う方でしばしば問題になるのが、音楽です。多くの場合、動画が大体完成した段階になって、

さてどんな音楽をつけよう...?

と困ってしまうのです。

最近は便利な世の中になったもので、ストック写真ならぬストック音楽という素材も出回るようになりました。

しかし、動画の雰囲気にピッタリなストック音楽を見つけたとして、それをそのまま乗せただけで良いでしょうか？せっかく音を入れるなら、音に合わせて画面上のものが動いたら面白くないでしょうか？

今回はPowerPoint上で音合わせをするにあたっての基礎知識をご紹介していきます。

1. 今回使う音

この記事では、音楽に合わせて動く簡単なアニメーションを考えます。

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パワーポイントで設定した、星が脈動しているだけのアニメーションです。星が0.5秒間隔で脈動しています。

それにこんな音をつけることを考えましょう。

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2. どうやって合わせるの？

ほとんどの音楽には、「テンポ」という概念があるのはご存知かと思います。

テンポは、音楽の中で一定間隔で繰り返される「拍」と呼ばれるアクセントの速さを示します。音楽を聴きながら手拍子したりしますよね？あれが拍です。

テンポを数値として表すときには、１分間にいくつ拍があるかを表記します。この時に用いられる単位が「Beat per Minute」、いわゆるBPMです。この数値はとても重要で、一部のストック音楽サイトでは素材ページに書いていることもあります。

なぜBPMが重要なのでしょうか？それは、これを使えばアニメーションの長さを正確に決定できるから(※)です。

拍と拍の間の時間は、次の計算式で出すことができます。

PowerPointでアニメーションを組むときは、一連の動作がこの数値と等しくなるようにすればいいのです。

（※BPMが連続変化する場合はこの限りではないですが、数学を駆使すれば計算することは不可能ではありません。）

3. 実際に合わせてみる

さて、先ほど提示したアニメーションに描かれた星は、一旦収縮してから元の大きさに拡大するという挙動を繰り返します。

アニメーションの中身を見てみましょう。

1. 80%のサイズに0.05秒かけて縮小する。タイミング: 直前の動作と同時

2. 125%のサイズに0.45秒かけて拡大する。タイミング: 直前の動作の後

これらのアニメーションは順番に発動しますから、１回の脈動には合計で0.5秒かかるわけです。

これを１拍の時間に収めたいわけですが、今回提示した音楽素材のBPMは、95です。先ほどの式に当てはめてみましょう。

おっと、脈動が速すぎるようです。確かに実際に動画に合わせてみると全然合っていません。

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それでは、アニメーションの長さの合計がなるべく 0.632 秒になるように設定してみましょう。

1. 80%のサイズに0.05秒かけて縮小する。タイミング: 直前の動作と同時

2. 125%のサイズに0.58秒かけて縮小する。タイミング: 直前の動作の後

これで合わせるとどうでしょう？

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計算通り、音楽に合わせて星が脈動するようになりました。

4. PowerPointで音付きで書き出す時の注意

ちなみに、PowerPointにおいて音楽を自動再生してから動画化しようとすると、途端に音がズレてしまうケースがあります。

これは、ある種のPowerPointの限界で、「音を鳴らそうとしたタイミング」と「音が鳴り出すタイミング」がズレてしまうのが原因です。

さらに厄介なのが、使っている環境によって、このズレの大きさが変わることがあります。

そのため、「絶対に〇〇秒にしておけばよい」という数値がないため、こればかりは自分で調整する必要があります。ちなみに、0.5秒以上遅れることは非常に稀です。

対処法はいくつかありますが、作業中に使える方法としては「アニメーションの開始タイミングを遅延させる」ことです。

ただ、厄介なのは音が先に始まってしまうパターンです。

この場合、理論上「アニメーションの遅延をマイナスにする」必要があり、それはPowerPoint上ではできない作業です。その場合は、音声の最初に無音を入れる作業をすることで解決します。

しかし、最も確実なのは音声データを抜いた動画データを別ソフトで音声と合わせることです。簡単な動画の編集をするだけであれば無料で利用できるソフトもありますので、それらも検討すると良いでしょう。今回は、私の音楽制作環境に動画を載せる機能がありましたので、それを使いました。

5. 音合わせするなら、きちんと計算しよう

PowerPointで音に合わせたアニメーションを作るには、実は計算が必要な作業なのです。

しかし、アニメーション一つで見れば0.01秒レベルのズレであっても、全体の長さが２分の動画を作ろうものなら、最後の方で丸々１拍分のずれになっていた...ということはいとも簡単に起こってしまいます。

例えば、BPM 120の楽曲の１拍ごとにアニメーションすることを考えると、正しい拍の長さは0.5秒ですが、これを0.51秒と間違えると、２分後にはなんと2.4秒、すなわち５拍弱もずれるという悲惨な結果が待っています。

では短い動画であればそんなに気にしなくても良いかというと、そうでもないのです。

動画を見る人は絶対に気付きます。「音がズレている」とまで言語化できなくても、何か違和感を感じてしまうものなのです。

もしPowerPointで音に合わせたアニメーションを作りたいならば、いくら細かくて面倒な作業に思えたとしても、しっかり合わせるようにしましょう！

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